Fostex TH900mk2用ケーブル AudioCreation PC-Triple-C撚り線 ちりめんチューブ仕上げ *Numberd

Fostex TH900mk2用ケーブル製作のご依頼をいただきました。

Fostexのハイエンドヘッドホンシリーズも、このTH900mk2とTH909で今の所落ち着いている感じでしょうか。
でも次に発売されるものが有っても、やはりケーブルは着脱式ですよね? Fostexさん。
と言いますのは今回ご依頼いただきました方、純正ケーブルの取り回しの悪さに辟易されてリケーブルを考えられたらしく、メーカーさんはもう少し、音質だけではなく取り回しの面も考慮された方が、より売れるのではないかな・・と思う所です。
ただまぁ、TH90Xシリーズは据え置きで使われる事をターゲットに開発されているでしょうから、難しい所なのかもしれませんが・・

ただし今回ご依頼いただいた方、普段の使用風景はノートPCにUSB/DAC(iFi Audio nano iDSD BL)を取り付けて音楽を聴かれているそうで、純正ケーブルでは重く硬く長く、とりあえず使いにくいとの事、また音質の面から見てもモニタリングというよりは弱ドンシャリでウォーム系のリスニングライクな音がお好みとの事、さらにもし可能であるなら「タチツテト」や濁音にもう少しキレが出ればなぁ・・とお考えでした。

返信1発目はE4UAで標準的に使用しているMogami2799・ナイロン編組チューブ仕上げとしたお見積りを立てさせていただいておりましたが、話を進めさせていただく中で既にMogamiの線材を使用した変換ケーブルをお持ちとの事・・ならば別なメーカーを攻めてみるのも良いかもしれないと思い、Audio CreationのPC-Triple-C撚り線をお勧めさせていただきました。
このPC-Triple-Cを使ったケーブルはE4UA blog内でも数本作例が有りますが、他メーカーでの採用もゆっくりじわじわと来ていますね。
製法はPCOCCと似ているようですが完全に同じという訳ではなく、現代流にアレンジされているようです。詳しく知りたい方は調べてみてください。
音質傾向は故PCOCCがカリカリチューンだったように思いますが、これよりも少し柔らかく鳴らす事ができるようで、より多くのヘッドホン・イヤホン用ケーブルとして使えるものになっています。

また、ケーブルは今後長距離の移動でも使われるらしく、タッチノイズについても重要な要素と考えられていました。
以下は私がタッチノイズについての考察をメールの返信の中で書いたものです。

”タッチノイズは2種類あると考えています。
1つは衣擦れ音、1つは打撃音です。

衣擦れ音はケーブルが衣類や硬いもので擦れた時に鳴るものですが、これはナイロンは繊維は細いですが基本的には堅いものですので、硬いもので擦った時に大きく鳴ります。
ちりめんチューブはポリエステルや綿でできていますので衣擦れ音は鳴りにくい傾向が有ります。
また巻き癖が付きやすくなるのであまりお勧めはしておりませんが、収縮チューブ仕上げとすると衣擦れ音は鳴りにくい傾向が有ります。
打撃音は堅いものに当たった時に鳴るもので、線材の柔らかさでこれが大きくなったり小さくなったりします。
純正ケーブルの殆どはとても柔らかい為打撃音は鳴りにくいですが、E4UAで扱う線材の殆どは純正ケーブルよりも硬い為、打撃音は純正ケーブルなどの柔らかいものと比べて鳴りやすい傾向が有ります。
打撃音を減らすにはE4UAにある線材ではACROLINK 極軟銀メッキ6NOCCにされますと、ポリウレタンの柔らかい被覆ですので鳴りにくいです。
これがテフロン系被覆そのままのケーブルですと打撃音は壮大に響きます。”

これを読んでいただき、最終的に外装はちりめんチューブでの仕上げとされました。
で、できたものが写真のケーブルです

ヘッドホン側プラグはTH90X系専用品、アンプ側プラグはオヤイデ P-3.5/4G軸とNobunagaLabs NLP-PRO-IS25のボディをニコイチした、小型ボディのプラグです。
プラグボディ部の長さはオヤイデ純正だと24mmの所が、21mmになりほんの少しですが短くなります。
この短さはたった3mmですがされど3mm、並べてみると分かるのですが結構違います。
またボディ色はシルバーからブラックになり、ヘッドホン側プラグとの雰囲気の調和も取れているように思います。

勿論ケーブルの寿命に直結するケーブルブーツは内装式で組み込んでいますので、プラグ肩(プラグ後端部)での曲げにも強くなっています。
内装式ケーブルブーツは2015年頃に私が考案したものですが、徐々に自作ケーブル界でも真似をしてくださる方が増えているようですね。
私の行った事で歴史に少しでも爪痕を残す事ができるとすれば、それはモノ作りをしている者にとって嬉しい事と言えます。

お写真とご感想をいただいています

より正確な感想は1週間ほどの試聴を挟んで改めて連絡させていただきたく思いますが、まずは開封後すぐの率直な感想をお伝えできればと思います。

■製品の仕上げに付きまして。
既成品と同じように問題なく利用できています。
ちりめん柄が美しく、所有欲をそそられる仕上がりとなっているように思います。

プラグは想像よりも少し長さを感じましたが、それでも十分小型で、これならばコードに限らずプラグなどにつないで使うことも十分できると思います。
肝心のDAPが未発売のため検証できておりませんが、追ってプラグを介したバランス接続利用を試してみたいと思います。

■取り回しに付きまして。
コードが短くなったことで、取り回しが大幅に向上いたしました。
当方の環境ではTVにつないでの利用などはないため、コレぐらいの長さのほうがDAPやPC、据え置きのオーディオ機器(リモコン無し)との相性が良いため助かります。
反面、残念ながらタッチノイズにつきましては、摩擦音は大幅に軽減されましたが、硬いモノと接触した時の音に関しましては(まだエイジングが進んでいないこともあり、)既成品クラスのノイズは発生しております。
逆に言えば、リケーブルにより、より音質を重視したケーブルに変更したにもかかわらず、既成品クラスのタッチノイズに抑えられていると言うこともできるかと思います。

■音色に付きまして。

正直に申しまして、様々な噂などもありリケーブルによる音質変化には半信半疑で、音色の向上は眉唾に考えており、取り回し面のみを期待していおりました。
標準のMogamiではなくTripleCケーブルに変更したのも、1週間超にわたり相談に応じてくださったE4UAさまへの御礼の意味もかねていて、純正品が7N銅という純正にしては高品質なものであるため、言うほどの音質変化は当初より見込んでおりませんでした。
しかし、それは誤りであったと、一聴して確信しております。
良し悪しは人によって感じ方は変わると思いますが、確かにコードやプラグの変更は音を激変させます。
DACのフィルター変更よりも、よほど分かりやすく音質が変化しました。

プラグのGND分離による音質変化ももちろんあると思いますが、それだけではないと思います。
期待通り音質が元気で歯切れがよい方に変化し、『ピアノ協奏曲第2番変ロ長調』におけるピアノの躍動感などが飛躍的に向上しました。
いろいろな演奏を聴いてみると、どうやら楽器の演奏音(瞬間的な叩く音や弾く音など)の表現力が強化された結果のように思います。
あいにくPCOCCの音質を知らないため比較できませんが、7N銅と比較すると簡単に聞き分けられるほど音に歯切れの良さが加わっているように感じます。
FOSTEX900mk2のクリア感をそのままに、HTP-700 TGの躍動感を足したような感じで、思っていたよりも理想の音に飛躍的に近づいたため、本当に驚いています。

音質面でも初聴きの段階で、既に十分な変化を感じていただいています。
純正ケーブルも音の面では良いのでしょうけど、ある程度の取り回しの向上と好音質化が同時に達成できた瞬間でしょうか。
この後、さらに聴き込んでいただいて、長文のご感想を頂戴しました。

おまたせしました、装着したヘッドホンの写真と、改めてリファレンスとして使っている曲を用いて詳細に聴き比べをしてみたのでお伝えできればと思います。

リケーブル後

『Beat it』 Michael Jackson
・いまいちヘタれていたドラムのキレが良くなり、自己主張が激しくなる。 引き換えに伴奏のシンセサイザーの音やウォームな環境音が引っ込む。
・男性ボーカルの印象に大きな差はないが、気持ち伴奏より前に出る。  しかしそれ以上にドラムの迫力に押され気味。

『Believer』 Imagine Dragons
・今回のリファレンス曲の中では一番ケーブルによる音質変化がわかりやすい楽曲
・男性ボーカルの発音が聞き取りやすくなり、伴奏のキレもよくなる。

『Wrecking Ball』 Miley Cyrus
・クリアさ、抜け感が向上する一方、残響もすぐ収まってしまうため、低音量だと味付けそのものは淡白に感じる。
・打ち込み系の電子音のはずみが良くなる。
・キラキラ感は弱まったが、大音量にしてもサビの音が団子になりにくくなる。
・ビブラートが聞き取りやすくなる。

『交響曲 第4番 ヘ短調 作品36』 Leningrad Philharmonic Orchestra 1961
・ストリングスの抑揚が聞き取りやすくなり、ブラスの刺さりが柔らかくなる。
・一つ一つの楽器の輪郭がよりはっきりする。

総じて純正ケーブルと比較して…

・音の立ち上がりが早くなる。
・音の分離や解像度が上昇、テスラドライバが元々持っていた能力と相乗効果を生み、瞬間的な音の再現力が飛躍的に向上。
・高音域が純正のものより音が引っ込みやすくなり、また倍音も比較的聞こえづらくなる。
・残響が目立たなくなる。

といった変化が起きたように思います。
誤解を恐れずに言えば、音質が平面駆動寄りに変化したと言えるかもしれません。

高音域の印象が弱くなりますが、元々TH900mk2の高音域は6db以上誇張されているため、大きなデメリットでは無いかと思います(個性は弱まりますが)。
1つハッキリ言えるとすれば、素材の味(原音)が純正ケーブルより分かりやすくなったのだけは間違いないです。

総じてリケーブルにより大音量再生向きに音質が変化し、分解能も大音量再生に耐えうる方向に変化したように思います。
TripleCは大型ヘッドホンや、それこそスピーカーに使った時にこそ強みを発揮する素材かもしれません。 

音質が平面駆動寄りに変化した・・ですか!
平面駆動のヘッドホンは、普通のボイスコイル+振動版のヘッドホンよりもさらに原音再生に特化しているように思いますが、忠実に音を届ける為にはPC-Triple-Cは良い選択になるかもしれませんね。
またさらに1か月ほど、今度はポータブルでもお使いいただいてご感想をいただきました。

製品を受け取ってから1か月が過ぎました。
長距離の運搬のためコードの着脱など繰り返しておりますが、なんのトラブルもなく利用させていただいております。

短く取り回しの良いコードは使いやすく、ストレスも感じずらくなりました。
コードのエイジングは思っていたより緩やかで、いまだ毛羽立ちも少なく、そのため擦れた際のタッチノイズなどはまだ残っていますが、コードの硬さはこの1か月の利用でこなれてきており、取り回しは頂いた当初よりもやや向上しております。

また、今までリケーブルによる音質向上にはやや懐疑的な思いもあったのですが、純正のものに比べて明らかに全体的に音が締まったことが確認できました。
特に低音のタイトさが際立っており、ドラムや太鼓などの音は間違いなく子気味が良くなりました。
ケーブルによる音質変化がここまで顕著だとは思わず、驚いております。
コードの音質変化に合わせて、現在はイヤーパッドなどとの組み合わせも模索しています。

PC-Triple-CはPCOCCと似た製法・・やはりタイトな低域は残っているようですね。
取り回しの点については、当初より今後はポータブルでも使う予定であると伺っておりましたのでツイスト数を通常より上げて製作しており、最初は硬く感じられるかもしれませんが使っていただくごとに少しずつ柔らかく馴染んでくるようにしています。
最初から柔らかいとヘタるのも早いですから・・
これからもずっとお傍に居られる事を感謝します。

ありがとうございました。

 

Fostex TH900mk2用ケーブル 120cm
分岐長35cm
E4プレート・シリアルナンバー有
線材:AudioCreation PC-Triple-C撚り線 片チャンネル2芯ツイスト
外装:ちりめんチューブ (黒地に割れ紋柄)
ヘッドホン側:TH90X系専用プラグ
アンプ側:3.5mm4極 オヤイデ P-3.5/4G軸&NobunagaLabs NLP-PRO-IS25ボディ ニコイチプラグ
商品代 24710円 (価格は製作当時(昨年5月ごろ)のものです)

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