DigiFi No.22 付録 バランス駆動対応ヘッドホンアンプ 改造

今や雑誌の付録にバランス駆動対応のヘッドホンアンプ(以後DigiFi22HPA)が付いてくる時代なのですね。私もこの号が出た瞬間、購入したクチですが、DigiFi誌はいろいろな付録を付けてくれるので面白いです。

今回は、そんな雑誌付録のヘッドホンアンプを改造してほしいとのご依頼を受け、これを行いましたのでご報告させていただきます。

まずこちらのヘッドホンアンプ、バランス駆動対応と言っても心臓部であるオペアンプが刺さっていない状態で付録になっています。お好きなオペアンプを・・との事ですが、すぐに使える状態ではないのがちょっとネックかもしれません。シングルエンド出力には最初からOPA2134PAが刺さっているのですが、バランスエンドの方にこのオペアンプを2つ刺しておいてくれた方が、それをシングルエンドに刺し替えればそちらでも使えるし良心的ではないか。オペアンプが売っているようなパーツ屋が近くにある人はあまり居ないでしょうから、バランス出力側を使い始めるには通販などでこれを購入しないといけないというハードルを設定するのはどうかなと思います。

DigiFi22HPAはUSBからの5Vを基板上で13Vに昇圧しているそうです。13Vは±6.5Vとなりえますが、±6.5V有ればかなり多くのオペアンプを使う事ができるようです。
ご依頼いただいた方はMUSES01を使われていましたが、同オペアンプの動作電圧は±9Vからの筈ですが、きちんと音は鳴っていました。オペアンプの使用法としては設計外かもしれませんが、使えるなら問題ないですね。

今回ご依頼いただいた方からは、いくつかのご要望をいただきました
・高域がもっと綺麗になれば
・中・低域の押し出し感の増加、締まり良く
・全体的な解像感の増加
でした。
またご依頼いただいたのは主にコンデンサの交換で、それ以外の部品については特に考えていない事、シングルエンド出力は一切使用していないのでこの部分は放置で構わないとの事でした。

私からはいくつかのパートに分けて、高音質化ポイントのご案内をさせていただきました。

1パート目はRCA入力部で、入力すぐの抵抗器R9,R10の交換、これの後に続くカップリングコンデンサC7,C8,C62,C63の交換
2パート目は3.5mm入力部で、入力すぐのカップリングコンデンサC10,C11,C60,C61と可変抵抗後のカップリングコンデンサC30,C31の交換
3パート目はバランスアンプ部でオペアンプ前のカップリングコンデンサC16,C40,C41,C42及びC66,C67,C68,C69、オペアンプの帰還抵抗の補償用コンデンサC17,C48,C50,C62、オペアンプ後のカップリングコンデンサC18,C19,C20,C21及びC74,C75,C76,C77、これの後にある負荷抵抗R74,R75,R76,R77,R78,R79,R80,R81の交換
4パート目は電源部でC1,C6,C36,C58の交換

以上です。
この他にも音の通り道で交換する事で高音質化に繋がりそうな部品は有りましたが、とことんまでやってしまうと電源部以外で殆ど全ての部品を交換してしまいそうな勢いでしたので、重要な所に絞ってご案内させていただきました。

高音質化に、コンデンサチューンは殆どのこうした音響機器で有効になります。
DigiFi22HPAではカップリングコンデンサの全てに積層セラミックコンデンサが並列されています。ノーマル状態にある高域のザラつき感は個人的にはこの積セラが原因と踏んでおり、このコンデンサの交換は必須と考えます。今回は同じぐらいのサイズでPanasonicのECPUという高音質なフィルムコンデンサを基板上の同じ位置で交換する事をお勧めさせていただきました。チップフィルムコンデンサの半田付けは、積セラでしたら問題無い熱もフィルムコンデンサがとても熱に弱い部品である為、なかなか難しい作業です。ひとつひとつ、ゴマ粒のようなチップコンデンサを半田付けし、導通検査を行っています。

積層セラミックコンデンサは印刷なども無い為、外見からは容量は分かりません。容量は決め打ちではありますが、電解コンデンサと並列のものは0.1uF、それのみで使われているものは1uFを使用しました。帰還補償抵抗に並列の積セラは回路の定数から47pF辺りかなと思い、同容量のスチロールコンデンサをチップコンデンサのランドに立てて半田付けしました。

RCA入力直後の抵抗器とオペアンプ後の負荷抵抗器は、私がリスペクトするnabeさんの耳をお借りして、台湾YAEGOの同値のものを発注して使用しました。

3.5mm入力後及びオペアンプ入力前段階の電解コンデンサはELNA SilmicIIをチョイスしました。Silmicのふわっとしながらも中・低域には張りのある音を入れようと考えた次第です。
オペアンプ出力後の電解コンデンサには高域の伸び感を期待して東信 Jovialをチョイスしました。

電源部は高品質な日本メーカーの電解コンデンサを、サイズ(太さ・高さ)がノーマル状態と変わらず、またなおかつ低Zタイプを選出して使用しました。これはご依頼いただいた方が専用ケースを使われているからで、ケースに入れなければ使えるなんてものは今回の場合は使用できない理由が有った為です。
電解コンデンサは電源部・音楽信号部どちらも、耐圧・容量ともに同じものを使用しています。

使用する半田はWBTの鉛入りを使用しました。鉛は減速材でもありますが、音の広がりは鉛入りの方が出る傾向が有りますし、今回のようなチップ部品の半田付けでは鉛入りの方が濡れ性が良い為少ない熱で半田付けを完了させる事ができる為です。

 

ご感想をいただいています。

本日、商品受け取りました。
HPAの基盤、添付の写真でも拝見していましたが大変きれいな仕上がりで、始めからこのような状態だったと錯覚するほどでした。
ケーブルも大変美しく仕上げていただき、ありがとうございます。コネクタもヘッドホンとの接続ばっちりです。ケチらず良い部品を使って正解でした。

早速、以前と同じようにHPAにHD650をバランス接続してみました。
改造前と比べ、高音がすっきりといい音になり、全体的に音質向上した印象でした。
D7200購入後はHD650バランスよりもD7200アンバランスの方が多くの面で勝っているように感じていただけに、HD650ってこんなにいい音だっけ?と思わせるほどでした。
改造の効果は大変大きかったようで、指定いただいた箇所を全てやってもらい正解でした。

D7200用ケーブルのエージングが20時間を超えましたので改めてじっくり聞いてみました。
改造していただいたHPAの効果もあって、純正アンバランスに比べて音の響きが引き締まり、解像度がかなり向上しました。
余計な残響が減り、埋もれていた音が聞こえてきます。
音源によってはカリカリになりすぎる場合もありますが、純正ケーブルやHD650との使い分けでちょうど良いと感じました。
ケーブルの付け替えも、コネクタがしっかりしているので安心です。
これからエージングが進むことで更にどう変わるか楽しみです。

この度は、HPA改造などという面倒な依頼にも快く応じていただき、大変感謝しております。
ケーブルも明日以降聞き込んでみます。エージング後にどう変わってくるのか楽しみです。
本当にありがとうございました。

改造後は私のノーマル状態のDigiFi22HPAと聴き比べて、一聴して分かるほどの変化が有りました。中・高域がとても滑らかで澄んだ音になり、また低域に厚みが出ており、改造の甲斐は有ったと実感しました。
同時にDENON AH-D7200用ケーブル製作のご依頼もいただいておりましたので、そのケーブルをもってバランス接続を楽しんでいただいたようです。
HPAの改造では音出しチェックも兼ねて20時間程度のエージング処理を行っていますが、ヘッドホンケーブルは導通チェックと簡単な音出しチェックは行っていますが、基本的にエージング処理は行っていません。面倒に思われるかもしれませんが、全ての音響機器は聴かれる音楽にごとにエージングの進み具合は変わってくるようですので、これはお楽しみと考えていただくようにしています。

ありがとうございました。