JH Audio Layla用ケーブル オヤイデ4N純銀撚り線 & PureOCC 8芯編み込み 120cm

その名前がそのまま創始者の名前であるイヤホンメーカーはあまりありません。
中でもJH Audioはそれが許されたメーカーなのかもしれません。
そんなHQ的存在 JH AudioのLayla用として、ケーブル製作のご依頼をいただきました。

JH Audioと言えばSIREN Series 極小の4ピンプラグでの接続が今では主流となりました。勿論LaylaはJHのトップエンドモデルですからこの4ピンプラグが採用されています。
通常は片チャンネルにつき最低でも4芯が必要で、これを1極ずつに配線するものですが、これが2芯で済む方がケーブルの取り回しは良くなりますし、芯数を上げた場合はその特徴を享受しやすくなります。ケーブルの取り回しの良さは即ち装用感の良さとして、芯数を上げた時の音の変化はそれが良いと感じられるものであればさらに愛着感の上昇に繋がります。そしてこれらは4ピンプラグ上に低域調整の可変抵抗を置く事で得ていただき易くなります。

製作前のご要望としては
・2.5mm4極バランス接続での製作
・イヤホン側プラグ上に低域調整を置く
・Laylaの特色を最大限生かせる線材で
・ケーブルの色は線材の色を見せる
・予算は4~4.5万円程度
上記のような感じでいただいていました。ここから、
線材を増やした時・ツイストした時や編み込んだ時の音質の変化や取り回しについて。
線材の種類をHotとColdにどう振り分けるか。振り分け方の違いによる音質の変化について。
外装の種類(外装無し・収縮チューブ仕上げ・編組チューブ仕上げなど)による取り回しの変化。Yスプリッターを入れる事の有用性について。
ヘッドホン側変換アダプタか、ケーブルにするか。使い方と将来性について
アンプ側プラグの種類とそれらの音質や強度、将来性について。
など、気になる点をどんどん挙げていただき、それらにお答えした上で仕様をご決定いただきました。

最終的に決定した仕様は、線材はオヤイデ4N純銀撚り線とPureOCCを4:4で8芯編み込み、HotとColdそれぞれに銀と銅をMixして使用、外装無し、Yスプリッターb、純銅4.4mm5極プラグというものでした。

今ではオヤイデより102SSCの単芯撚り線の線材が出ましたが、製作当時は4N純銀撚り線に併せられる高品質な銅線はPureOCCしかありませんでした。これを片チャンネルに2芯ずつ、合計で片チャンネル4芯、ストレート部は8芯の編み込みを行いました。

4N純銀撚り線・PureOCCともに細めの線材ですので編み目も細かくなり、製作にはなかなか時間がかかりましたが出来上がったものは完全に等間隔に緻密に編み込まれ、眺めていても気持ちの良いものでした。

ヘッドホン側プラグは変換アダプタも製作していますが、プラグに低域調整抵抗を乗せた上で配線し、ボディをアクリルで滑らかに形成しています。
低域調整の抵抗器について、JHの純正ケーブルでもそうですが使用しているものは厳密に言うと可変抵抗器ではなく半固定抵抗器です。半固定抵抗器の元々の用途は基板実装向けで機器内部での使用が前提に作られているものであり、基本的にはちょくちょく動かす用途ではないものです。小型なのでケーブルの中間点に置く事ができてしまいますが、抵抗フィルムに蠕動する接点が組み込まれている構造は過去より変化は無く、動かす事が多くなれば可変抵抗器であれ半固定抵抗器であれ最終的にはガリが出てしまいます。取説には「あまり動かさないように」なんて書けませんが、物としてはそういうものが使われています。
ヘッドホン側プラグに低域調整を置くと手元で低域を調整する事はできなくなり、誰かに調整してもらうというちょっと面倒な仕様にはなってしまうのですが、基本的には一度自分の好みの所に調整すればあまり動かさないものですので問題は無いと考えます。

Yスプリッターはbタイプ、ブラックアルマイトのものを選択されました。
このYスプリッターというもの、電流が流れる部品ではないので音質に直接関わりはありませんが、これはこれで重要な役割が有ります。
Yスプリッターを入れない場合はE4UAでは収縮チューブによる形成を行っていますが、ここに重量物を入れる事でタッチノイズを少し減らす事ができます。またこれは収縮チューブでの形成でも可能ですが、ケーブル中間部に別な色を持ってくる事で全体の雰囲気に締まりが出ます。重量が増えすぎると扱いにくいケーブルになってしまいますので、アルミ&カーボン程度の重量が良いようです。特に今回は編組チューブなどの外装が無いのでケーブルに物が当たるとそれがタッチノイズとして響きやすくなります。
ケーブルをどこかに固定する事でもタッチノイズは抑制できますが、1本のケーブルとしてはケーブルクリップは邪魔な存在になりがちです。イヤホンケースに入れる時にも不便かもしれません。今回はヘッドホン側・アンプ側共に黒のものを選択され、ケーブルの編み目が変わる所にYスプリッターを置き、また黒を持ってくる事で”使える”ワンポイントが生まれています。

アンプ側プラグはご依頼いただいた当初は2.5mm4極プラグでの製作だったのですが、4.4mm5極プラグの有用性と将来性について説明させていただき、最終的には4.4mm5極で純銅製のNLP-PRO-TP44/5CQでの製作となりました。
DAPを買い替えられた事を含めると、ご要望でいただいていた予算を遥かに突破してしまっていますが、オーディオ専用に設計された4.4mm5極というプラグ、汎用性を保ったまま多極化を推し進めた2.5mm4極と比べるとなかなか良い点ばかりです。唯一汎用性の点ではまだまだ浸透しきっていないので低いですが、きちんと管理された接点圧、ポータブル使用でも問題の無い強度とある程度のボディの小ささを備えています。将来性を考えればオーディオ専用に設計されたものですので、対応するプレーヤーやアンプは必ず出てきますので強いものだと考えます。
その中でも今回は純銅製プラグを選択されました。プラグによる音の変化は、線材による変化よりもかなり少ないものです。ですので厳しく問わないのであれば安価な真鍮製プラグの方が良い場合も有りますし、材質による音の違いで真鍮製の方が合う場合も多いものです。
プラグの材質として真鍮と銅の音を極端に分けると
真鍮:低域寄り・ふわっとした音でリスニング向け
銅:高域寄り・かちっとした音でモニタリング向け
って簡単すぎますかね。でもトープラ製プラグではそんな感じに受けました。

かなり長く書いてしまいました・・

お写真とご感想をいただいています。

 

先日帰宅しまして、ケーブルを受領しました。
所有感に満たされる外見、そして、非常に丁寧に編みこまれたケーブルを見るだけで、品質が高レベルにあるのが分かります。

外装なしにしたことにより美しく丁寧に編みこまれ、そして、銀線と銅線が交互に編みこまれた非常に上品な概観を見ながら、音楽を聴ける幸せに非常に満足感を覚え、所有感に満たされております。

取り回しですが、外装なしにして正解でした。
硬くもなく、柔らかすぎることもなく非常に使いやすいです。

肝心の音質ですが、

文句の付け所がありません!
高音域はどこまでも伸びていきますが、刺さる感じは一切せず気持ちいい音を出します。
低音域も、ドンドンくる重い感じのものではなく、柔らかく、やさしい落ち着く感じがします。
当方使用している LAYLAの持つ情報量、高解像、フラットな音質、音場の広さ、これらすべてが1段階も2段階もレベルアップした音質に非常に満足しています。
バランスケーブルということで、使用する機材が限られていますが、もう純正のケーブルは使わないと思います(笑)
当方使用しているNW-WM1Z、LAYLAともにまだ使用し始めて、時間の経っていないものなので、これからの音質の変化も非常に楽しみです。

E4UAさんの、確かな技術、知識、そして、何より、依頼者のニーズを正確に汲み取れる感性に感服いたしました。
これからも、よい製品を作り続けてください。
また機会がありましたら、E4UAさんにオーダーさせていただきたく思います。

本当にありがとうございました。

ご依頼いただいてから仕様の策定、ご入金いただきキューにお並びいただいた順に製作、そして発送、この時点で40日程度での納品となりました。十分にお悩みいただいたのもありますが、ご満足いただけるものができたので良かったです。

ありがとうございました。

 

JH Audio 4ピンケーブル 120cm
分岐長40cm
耳掛けワイヤー無 収縮チューブによる形状固定6cm
スライダー有
線材:オヤイデ4N純銀撚り線&PureOCC 4:4編み込み
外装:Yスプリッターb ブラックアルマイト
ヘッドホン側:JH4ピンプラグ 低域調整抵抗付き アクリル形成ボディ
アンプ側:4.4mm5極 NobunagaLabs NLP-PRO-TP44/5CQ
商品代 63758円 (価格は製作当時のものです)